ヒトラーの贋札

最近こういうヒトラー政権下の映画がドイツで多く作られているように思う。この映画の制作スタジオは「ヒトラー 〜最期の12日間〜」と同じらしいし、やっと冷静にヒトラー時代を詳細に描けるようになったのだろうか。

ヒトラーの贋札 [DVD]

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この作品は、ナチス・ドイツがイギリスの経済攪乱を狙い画策したの紙幣贋造事件「ベルンハルト作戦」に関わった、ユダヤ人印刷工アドルフ・ブルガーの証言に基づいて制作された映画であるそうだ。つまり半分以上は現実に基づいているのかな。主人公が印刷工じゃなかったので、そこらへんがよくわからないけれど。で、映画全体を通してみると、はじめて生きた「ザ・ユダヤ人」が描かれているように思った。アーリア人が恐れていた狡猾で賢いユダヤ人の姿がそこにあった。


この映画は、2通りのユダヤ人の姿が描かれている。1つは正義をつらぬくユダヤ人。もう1つは自らの命を守るためにナチに協力するユダヤ人。後者は「魂をうっている」ととられそうだけど、決して魂は売ってはいない。今までは前者が多く描かれる映画が多かったけど、今回は後者を描いたことによって、より人間が描かれる映画になったと思う。戦争は正義と悪だけでは解決できない、さまざまな問題があるという基本的なことを思い出させてくれた映画だった。ただ、前者の役がなんだか正義感が強すぎておかしくって、この映画を浅いものにしてしまったように思うのが残念。